避難勧告がなくなり避難指示だけに 〜「考える」時事問題対策は日頃から

スポンサーリンク
中学受験
スポンサーリンク

2021年5月21日から、「避難勧告」がなくなり「避難指示」に一本化されました。
この避難情報をはじめ、災害関連は、中学受験でも頻出分野。2021年は東日本大震災から10年。近年、豪雨や地震など、災害が相次いでいることから、2022年の入試でも、引き続き災害や防災などは、時事問題の重要テーマになります。

スポンサーリンク

2021年の中学受験「過去問」は”過去の物”に

今回改定されたのは、内閣府が公表する「避難情報に関するガイドライン」です。
避難情報そのものについては、頻出分野というほどではありませんが、2021年の中学入試でも出題事例があります。

豊島岡女子学園中学(2021年)

最も適切なものを一つ選び、番号で答えなさい。
1. 大雨などで自治体から警戒レベル3と発表されたら、高齢者などは避難する。
2. 大雨や台風接近時には、革や用水路を直接見に行き様子を確認するほうがよい。
3. 大きな揺れの地震が発生した際にガスコンロを使用していた時は、いち早くその火を消す。
4. 小学校・中学校では、防災の日に避難場所まで避難する訓練が義務づけられている。

この問題、ひっかけは3.で、ガスコンロの火を消すのは、身の安全を確保して揺れが収まった直後でかまいません。ガスには、安全装置がついているためです。
なお、実は、「警戒レベル3」という発表のされ方をされるわけではないので、アは本当は誤りなのですが、豊島岡では1.を正解として出題しています。

詳しくは、こちらの記事でも解説しています。

ただ、2021年のこの問題も、制度改正によって「過去の物」となります。

「避難勧告」はなくなり「避難指示」に一本化

2021年のガイドライン開成では何が変わるのでしょうか。

  • 避難のタイミングを明確にするため、警戒レベル4の避難勧告と避難指示(緊急)を「避難指示」に一本化 (現行で避難勧告を発令しているタイミングで、避難指示を発令する)
  • 災害が発生・切迫し、警戒レベル4での避難場所等への避難が安全にできない場合に、自宅や 近隣の建物で緊急的に安全確保するよう促す情報を、警戒レベル5「緊急安全確保」として位置づけ
  • 早期の避難を促すターゲットを明確にするため、警戒レベル3の名称を「高齢者等避難」に見直し

変更の背景としては、次のような事情が記されています。

  • 警戒レベル4避難勧告で避難せず被災する人が多いが、 警戒レベル4の避難勧告、避難指示(緊急)の意味の違いが正しく住民に理解されておらず、また、両方が警戒レベ ル4に位置付けられ住民にわかりにくい
  • 現行の警戒レベル5「災害発生情報」は、とるべき行動がわかりにくく、また、市町村が災害の発生を把握できず発令できないことが多いため、有効に機能していない
  • 現行の警戒レベル3「避難準備・高齢者等避難開始」は、 名称が長く、また、一般の人に求める「避難準備」から名称が始まるため、高齢者等に避難を求める情報であることが伝わりにくい

受験対策としてのポイントを改めて確認すると、

  • 「避難勧告」がなくなり「避難指示」に一本化されたこと。
  • 警戒レベル3では、高齢者は避難すること

また、変更の背景を理解しておくことも、最近の「考えさせる」入試問題対策としては非常に重要です。
さきほどの豊島岡の入試問題を見ても、「大雨や台風接近時には、革や用水路を直接見に行き様子を確認するほうがよい」が誤っていることは常識的にわかるはずです。
災害関連の問題は、このあとご紹介する慶應中等部の問題のように、災害を「身近な問題」「我がこと」として意識しているかどうかを問う形で出題されます。

「災害」を身近な問題として考える姿勢が問われる

2019年、千葉県に大きな被害をもたらした台風15号や、武蔵小杉のマンションの浸水なども発生した台風19号など、防災対策が施された都会で暮らす私達にとっても、災害は決して他人事ではありません。
2021年の慶應中等部では、次のような問題が出題されました。

慶応義塾中等部(2021年)

東日本大震災後、都内の私立小学校・中学校は震災発生時にその学校だけでなく他の私立学校の生徒の避難も一時的に受け入れる約束を結んだ。その理由を答えなさい。

単なる暗記だけで乗り越えられないのは、ふつうの地理・歴史・公民の問題も時事問題も同様です。「登下校の時間帯に震災が発生し、首都圏の交通機関がストップするような状況でも、所在不明の生徒を出さないため」という趣旨が解答になります。

この協定について知っている受験生は皆無のはずで、この問題は知識を問うわけではありません自分の言葉で、問題点や課題を考えて、解決策を推測するという、考えて答える能力が問われるわけです。

ふだんから、考える習慣がついている受験生にとっては、むしろサービス問題なのですが、思考型の問題は、決して知識がまったく求められないわけではありません

さきほどの豊島岡の問題のように、最低限の知識を大前提として、その上で常識や思考力を問う問題が、近年の中学入試では、頻繁に出題されます。
また、避難指示一本化への背景を、自分の言葉で説明するような類の力は、実は、記述式ではありませんが、筑波大学附属駒場でも問われる能力です。

大人レベルの社会の出来事への関心度を求め、なおかつ、政治家や官僚、またはビジネスマンや専門家になったつもりで、制度の問題点や背景などを考えさせる
それは、将来、世の中を先導していくエリート予備軍たるトップレベルの受験生たちに求められる能力なのです。

小学生新聞などで身近なニュースにふれる習慣を

そして、こうした問題への対応には、塾での時事問題対策だけでは難しくなっているのが現状です。
秋以降、SAPIXや日能研などから出版される時事問題対策の参考書は、関連知識や背景などを掘り下げた、非常に良質のつくりで、中学受験対策のみならず高校入試にも対応するレベルです。

しかし、秋以降は、塾の授業時間が増え、模試も頻繁に行われ、「暗記モノは最後にやればいい」という状況ではありません
そもそも、本来、常識というのはテキストで学ぶべきものではありません。
早い段階から、小学生新聞などで社会や理科などのさまざまな事象に関心を持てる家庭環境を整え、塾で習ったときには、なんとなくでも「知っている」という状況を作ることで、理解度が深まり、知識の完成度は高まります

特に小6は、実は、夏休み前の1学期こそが、自分のペースで弱点を補強できる最後のチャンスでもあります。日頃から、今回の制度改正など、中学受験に関連しそうな情報には、親子でアンテナを張り、日常的にニュースに触れ、世の中の仕組みを理解する習慣・環境づくりがとても大切です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました