早稲田実業が2022年からの男子定員削減と学費の値上げを発表しました。
大学定員の厳格化の影響も受けて、中学受験では、早実に限らず、早慶附属校の人気は今後も高まることが予想されます。
一方で、大学までに1000万円以上の学費を覚悟しなければならないのも事実です。
早実の学費は、中学高校の6年間で最大90万円の値上げに。
そして大学進学後まで含めると、他の早慶附属中学・高校と比べてどうなっているのでしょうか?
早実は学年により異なる学費に 男子定員は減少
2021年3月、早稲田実業中等部・高等部が2022年からの男子の定員削減と学費の値上げを発表しました。
ウェブサイトには、その趣旨について、次のように記されています。
- 教育のあり方の抜本的な見直しの一環として、クラスサイズ及びクラス数を調整する。
- 中等部は1クラス36名程度、6クラス編成とする。クラスサイズ、クラス数ともに2022年度入学者から変更する。
- 高等部は1クラス40名程度、8クラス編成とする。クラスサイズは2022年度~2025年度入学者の間で漸減する。クラス数は2022年度入学者から変更する。
つまり、「きめ細かい教育の実現等」のために、少人数化を実施するということです。
定員は男子のみ削減
男子の定員削減は、多くの受験生にとって心配のタネになるでしょう。
中等部の募集人員は、次のように変更されることが発表されました。
2022年度の募集人数:約110名(男子約70名、女子約40名) 帰国生徒 若干名
<ご参考>2021年度の募集人数:125名(男子85名、女子40名) 帰国生徒 3名以内
これまで85名だった男子の募集人数が70人に。つまり、男子は15人の定員削減です。
四谷大塚の偏差値で63と、早大学院と並ぶ偏差値でしたが、今回の定員の削減で、早実の難化が予想されます。15人というと、一瞬大きくない数字のようにも思えますが、率で言うと2割の削減になりますので、それなりのインパクトのある数字です。
学費は中等部が高等部1・2年より高額か
また、早実は、新しい初年度の学費について、以下のように発表しました。
(入学金、授業料、施設設備資金等)
中等部現行の初年度学費 | 1,128,000円 |
2022年度入学者 | 1,140,000円 |
2023年度入学者 | 1,200,000円 |
2024年度入学者 | 1,260,000円 |
2025年度以降入学者 | 1,320,000円 |
高等部現行の初年度学費 | 1,128,000円 |
2022年度入学者 | 1,140,000円 |
2023年度入学者 | 1,140,000円 |
2024年度入学者 | 1,170,000円 |
2025年度以降入学者 | 1,200,000円 |
2025年までの間、4年間かけて段階的に引き上げられます。
中等部の来年の入学者はことしとほとんど変わりませんので、大きな心配は必要ありません。ただし晴れて中等部合格後、高等部に入学する2025年以降は改定された学費が適用されると想定されます。
中等部の初年度費用は、最終的に20万円弱の値上がりとなり、高等部初年度費用よりも値上がり幅が大きくなっています。
その目的については、次のように記されています。
- 今回の改革を実現するために必要最小限の学費の値上げを行う。
- 高等部の授業料を、その教育方法、内容等を踏まえて、学年ごとに異なる額とする。
- 中等部の授業料を、その教育方法、内容等を踏まえて、高等部3年と同額とする。
- 授業料以外についても納入時期、金額等について必要な見直しを行う。
- 学費の改定は、急激な負担増を避けるため4入学年度にわたって段階的に実施する。
ポイントは、2番目と3番目。「高等部の授業料を、その教育方法、内容等を踏まえて、学年ごとに異なる額とする」ことと「中等部の授業料を、その教育方法、内容等を踏まえて、高等部3年と同額とする」ことでしょう。
これまで、早実の「授業料」は、中等部も高等部も492,000円で共通でした。
今回の改定では、中等部の定員は、現行の45名から36名に少人数学級化することが発表されていますが、教育の対価である授業料は、方法・内容によって変更するということです。
少人数化という観点では、慶應義塾普通部が、1年生のみ1クラス24人の少人数学級を実施済みですが、慶應普通部では1年生も2・3年制も授業料に差はつけられておらず、「学年によって学費を変える」というのは私立中学・高校の中でも、珍しい取り組みです。
授業料と入学金・施設設備資金等の内訳は公表されていませんが、仮に増額分すべてが授業料だとすると、
- 中等部1〜3年と高等部3年の学費は年間192,000円のアップ
- 高等部1〜2年の学費は年間72,000円のアップ
6年間トータルでは、最大912,000円アップする計算です。
ただし、増額分の大半が入学金であれば、6年間の増額幅はもっと小さくなります。
この点は、今後学校側から発表される公式な発表をご確認ください。
大学卒業までの学費は他の早慶附属校並みに
そもそも早実をはじめ、早慶の附属校(厳密には早実は「系列校」で、慶應は「一貫教育校」と呼ばれています)に通った際、大学卒業までに必要な学費はどのくらいかかるのでしょうか?
中学入学後卒業までの学費の累積額のシミュレーションを掲載しました。
- 早実から早稲田大学の政治経済学部に進学
- 早大学院から早稲田大学の政治経済学部に進学
- 慶應義塾普通部から慶應義塾高校を経て慶應大学経済学部に進学
- 慶應義塾中等部から慶應義塾女子を経て慶応大学経済学部に進学
以上の4パターンでシミュレーションしました。
入学金・授業料・施設設備費などを各学校のホームページ記載の金額をもとに作成しています。
また、この他に寄付金や積立金を求められる場合があります。 さらに、部活動費などもかかるため、実際はこれよりも多くの費用がかかることになります。
大学は、特に理系の学部ほど学費が高くなります。慶應医学部に進めば、1年間あたりの学費はプラス250万円ほどの365万円ですので、6年間の学費は、さらに1000万円ほど増える計算です。
早実は、学費改定前の現在の学費でグラフ化しています。
早慶の附属中学に入学すると、入学金と授業料・施設維持関係の費用だけで、大学卒業までの10年間に1000万円以上の学費がかかることになります。
グラフをご覧いただければわかるとおり、これまでは、早実は、早大学院や慶應普通部・中等部などと比べても学費が低く抑えられていました。大学卒業までのトータルで見て早大学院と比べると200万円ほど安い計算でしたが、来年以降の学費の値上げで差は縮まる見込みです。
大学卒業までの学費も意識して
早慶の附属中学・高校の学費は、他の私立中学と比べて高い部類になります。
各私立学校の学費は、市進学院のホームページなどで詳しく整理されていますので、どうぞご参照ください。
内部進学で大学に進めることを考慮すれば、大学受験のための塾通いも必要なく、浪人のリスクも低いため(もちろん留年などはありえます)決して、大学卒業までのトータルの教育費がほかと比べて高いというわけではありません。6年間塾通いするのに比べれば、結果的に教育費は低く抑えられるはずです。
また、早稲田と慶應で慶應のほうが学費が高い印象がありますが、少なくとも中学以降では特段慶應が高いというわけではありません。
とはいえ、最近は、中高一貫校も私立だけでなく、都立小石川という選択肢も出てきました。もちろん、これまで同様、筑駒や筑附など、国立に進むのは、金銭的には私立よりもメリットが大きくなります。
附属校か進学校か、というのは金銭的に勘定するものではありませんが、一方で、附属校に進学するということは大学まで私立の学費を最低10年間払い続けるということになります。
また、慶應のように、学費はスライド制で、物価の変動等に応じて今後値上がりする可能性もあります。
特に附属校の進学にあたっては、志望校を決める段階で、将来の教育資金についてよく検討されることをおすすめします。
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