都立高校の男女別定員や入学基準の違いが話題になりますが、都立日比谷高校の入試の受験者平均は女子より男子のほうが高いのはご存知でしょうか?むしろ、難関校を受験する女子にとっては厳しいのは、併願の対象となる私立の学校は極めて少ない現実です。
中学受験か高校受験か、という選択にも影響を与える程度の市場の小ささ。気づいたときには手遅れとならないよう、早めに状況を把握しておく必要があります。
都立高校入試の”男女別定員制”
女子の方が高得点が必要??
都立高校入試に関する、NHKのウェブサイトの記事がSNS上で注目を集めました。
都立高校の入試は、男女別の定員があり、男女の合格点に差があることに注目した記事です。
その中には、次のような記述が。
「男女の合格最低点に差が生まれ、女子のほうが高くなる傾向がある」というのです。
記事では、このように記されています。さらに…
リストに載っている全日制普通科104校のうち85校は女子の合格基準が男子より高くなっています。
中には、男女の基準が同じ学校もありますが、男子の基準が高い学校は1つもありませんでした。
と調査結果を記しています。
日比谷高校の「受験者平均点」は男子の方が高い
NHKらしいと言いますか、記事では、都立高校全般について取り上げていますが、都立トップ校である日比谷高校についてみると、いわゆる入学試験の男女別の受験者平均点は男子の方が高い傾向があります。
都立日比谷高校 | 男子受験者 5教科平均 | 女子受験者 5教科平均 |
2015年 | 347.9 | 344 |
2016年 | 367.1 | 348.6 |
2017年 | 387.7 | 378.7 |
2018年 | 359.4 | 353.7 |
2019年 | 343.1 | 326.9 |
2020年 | 335 | 330 |
すでにデータが発表されている2020年までの入試の受験者平均を比較すると、いずれの年も男子の方が得点が高い傾向にあります。
つまり、トップレベルの層について言えば、決して女子の方が高得点が必要というわけではありません。
なお、日比谷高校は都立ですので、いわゆる入試の得点に加え、内申点が加算され、総合的に判定されます。過去、内申の素点の平均が公表されていた時期のデータでは、女子のほうが若干高い傾向にありますが、9科目45点満点で1.5点程度女子が高くなっていました。
つまり、内申は女子の方が高く、入試の点数は男子のほうが高いという特徴が見られます。
こうした状況を加味しても、決して女子の方が高得点が必要というわけではありません。
実際、サピックス中学部の偏差値表では、日比谷高校の偏差値は、男子が58なのに対して、女子は52と、圧倒的に男子のほうが高くなっています。
トップレベルの高校について言えば、同じ高校に入る場合、女子の方が難しい、高い得点が求められるとは言い切れません。
とはいえ、都立日比谷は男子132人、女子122人という狭き門です。2021年の倍率は、男子が2.25倍、女子が1.95倍。
私立高校の入試のあとに行われる公立高校は、合格可能性が現実的に低い学校は受験しない傾向にありますので、決して低い倍率ではありません。
つまり、現実的には日比谷を第1志望校にする場合も、安全圏の私立高校をあわせて受験する必要があります。
ただ、私立高校の受験において、男子と女子は全く環境が異なるのです。
私立の女子校が多い東京??
近年の私立のトレンドは「共学化」
さきほどのNHKの記事では、次のような記述があります。
都内の私立高校233校のうち、34%にあたる80校は女子校で、その数は男子校32校の倍以上です。
たしかに、東京都生活文化局の資料にもとづくと、女子校の割合は男子校よりも高くなっています。
(『東京都の私学行政』より)
さらに、次のように記されています。
私立学校の中には、歴史的にも早くから女性の地位向上をめざし、女子教育の普及実践等を目的として設置された学校が少なくないこともあって、ことに高等学校及び中学校においては女子校が多い。
ただし、近年、男女共学のウエイトが高まっており、 ここ 10 年では、中学校で 12 校、高等学校で 16 校が男女共学化している。
多くの方がご存知のとおり、共学化は、最近の私立の特徴を表す大きなトレンドとなっています。
上位校に少ない女子校
さらに、都内で女子校が多いと言っても、こと日比谷高校を受験するような上位層の生徒にとって、選択肢が非常に少ない現実があります。
こちらは、SAPIX中学部の偏差値表のうち、早慶附属高校以上の偏差値の学校を抜粋して、定員を表したものです。
ご覧いただいてわかるように、男子の青が目立っています。
男子は、筑波大学附属駒場や開成高校が最難関に位置し、慶應義塾高校や早大学院など、募集人数の多い学校が並びます。
一方、この中で女子校は慶應義塾女子高校のみです。
いくら都内で女子校が多くても、偏差値が高い学校限定で見ると、女子校はほとんどないのです。
そして、上記学校の募集人数を男女別にまとめると以下の通りとなります。
圧倒的に女子の募集人数が少ないことがわかるかと思います。
なお、このレベルの学校としては、豊島岡女子高校が人気を保ってきましたが、2022年入試から募集を停止します。
近年は男子の成城高校や本郷高校など、少し遡ると海城高校など、中高一貫校での高校募集停止は増える傾向にあります。
1990年代まで遡れば武蔵高校や神奈川県の浅野高校など、中学受験では難関校の地位を築いている学校が募集を停止しました。
ただ、豊島岡女子は、数少ない女子の難関校の1つであったために、他の事例よりも大きなインパクトをもって受け止められています。
中学受験か?高校受験か?女子は早期に選択を
日比谷高校や神奈川県立横浜翠嵐高校の東大合格者の増加を受けて、たしかに公立の進学校が注目を集めています。
「厳しい中学受験を乗り切って、6年間高い学費を払って大学進学を目指すより、公立中学から公立の進学校に進み、国立大学を目指したほうが効率的」という考え方はあっても別によいでしょう。
進路についてはご家庭によってさまざまな考え方があります。ただ、「難関大学への進学」というのを目標にするならば、高校受験という選択肢は、特に女子においては非常に厳しいものだと認識する必要があります。
中学受験では女子御三家をはじめ、多くの選択肢がありますが、高校ではかなり限られます。
中学受験をするかしないか、さらには中学受験で意中の学校に合格を果たせなかった場合に高校受験でのリベンジを図るかという点においても、男子と女子では事情が全く異なります。
いま注目を集めているNHKの記事も、男女の扱いに差をつけることの是非に着目して取材されていますが、難関校の受験における男女の差については触れられていません。
むしろ、受験生にとっては、自分が希望するレベルの学校で、どれだけ選択肢があるかが重要になります。
そして、高校での選択肢の少なさに、中学入学後に気づいても、中学受験をやり直すことはできません。
お子様が小学生のうちから、高校受験の現状を理解された上で、中学受験か地元の公立に進むのか、という選択をとられることをおすすめします。
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