中学入試で「必ず出る」時事問題。小学生新聞はその対策に効果的であるばかりか、読解力や、特に難関校で問われる社会・科学など幅広い常識力の定着につながります。
朝日小学生新聞や読売KODOMO新聞、毎日小学生新聞、中学受験におすすめなのは?元サピックス社会講師が分析します!
必ず出る「身近な話題」
中学受験の社会や理科で差がつくのは、塾のテキストだけでは学べない「常識」を問う問題。
その典型が、教科書に載っていない知識や理解を問う時事問題です。
時事問題が出題される学校、されない学校ははっきりと分かれてはいますが、複数校を受験する前提に立てば、時事問題対策は不可欠です。
たとえば、2021年の筑波大学附属駒場中学は、コロナ禍で「出題範囲」の制限措置がとられましたが、時事問題についてははっきりと出題範囲に明記されました。
社会
6年生で学習する内容のうち、教科書中の次に挙げる内容を出題範囲から除外します。
・東京書籍、教育出版の教科書のうち「世界の中の日本」
・日本文教出版の教科書のうち「世界の中の日本と私たち」
ただし、時事問題は出題します。
SAPIXと読売新聞の提携サイト「じじもんスクラム」は大人向け
時事問題にどう対策をとればよいのでしょうか?
難関校への抜群の合格実績を誇るSAPIXでは、読売新聞と組んで、「じじもんスクラム」というページを開設しています。
「じじもんスクラム」は、読売新聞を使って時事問題を学ぶためのサイトです。進学教室サピックスの先生の監修により、読売新聞社が運営しています。
「毎週1回、進学教室サピックスの先生がピックアップした読売新聞の記事を読むことで、時事問題学習ができ」るというものですが、素材となるのは、大人向けの読売新聞。
その記事を切り取って、スクラップブックを作るというものですが、正直小学生にはハードルが高く、親の負担も重いです。
ましてや、読売新聞は、月税込み4,400円(セット版)。
最近は、紙媒体の新聞を購読しない家庭も増えていますし、中学受験のために購読するにはちょっと荷が重すぎます。
ニュースはたいていネットで閲覧可能ですし、私も日経電子版(月額4,270円とやや高額ですが、会社の福利厚生で安く購読できる)と、デジタル毎日(月770円で英語のウォール・ストリート・ジャーナルも購読可能!)と、デジタル版の新聞しか購読していません。
じじもんスクラムは、親が、子供との会話の材料を探すにはもってこいですが、子どもg編み図から読む教材としては、やはり小学生新聞が最適です。
「新聞を読む習慣」も身につく朝日小学生新聞
その小学生新聞。朝日・毎日・読売の3社から発行されています。
朝日小学生新聞 | 読売KODOMO新聞 | 毎日小学生新聞 | |
発行日 | 日刊 | 週刊 (毎週木曜日) | 日刊 |
購読料(月額) | ¥1,769 | ¥550 | ¥1,750 |
以下、それぞれの主な特徴です。
朝日小学生新聞
なんといっても中学受験向きなのは朝日小学生新聞です。
毎日届くのが特徴の朝日小学生新聞。1日8面で基本的に全面カラー刷りです。
「小学生新聞」というと、社会科を意識したもののように思えますが、実際は、すべての教科にまたがる「教材」です。
「天声こども語」という国語を意識したコーナー、最近中学入試で頻出の「SDGs(持続可能な開発目標)」の特集、このほかSAPIXや早稲田アカデミーの講師による理科や社会の特集コーナーも設けられます。連載は時期によって異なりますが、子どもが興味を持てるコーナー盛りだくさんで、私立中学の時事問題対策だけでなく、公立中高一貫校の適性試験対策にも最適です。
また、小学生新聞を購読すると、時事問題対策がむしろ大変になるのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ時事問題対策としてのニュースコーナーはかなり絞られている印象です。
ニュース記事自体は、本当に重要なものだけが掲載されているので、要点を絞った学習が可能です。
このほか、中学受験情報や子どものコンクール、展覧会の情報なども満載ですので、親の情報入手にも役立つはずです。
そして、大人の新聞と同じ効果なのですが、毎日強制的に新聞が届くことで、「意識していない」情報に出くわすチャンスが増えます。ネットは、調べたい情報にたどり着くことは簡単ですが、興味のない分野の情報は疎くなりがちです。この点、小学生新聞は、興味の有無に関わらず有意義な情報に接することができ、それが新たな関心を生み出すことにもつながります。
また、サイズは通常の新聞サイズです。後述する読売KODOMO新聞は、タブロイド判でサイズとしては読みやすいのですが、「子供向け」感が強く出てしまいます。
「大人と同じ新聞を読んでいる」という満足感を与えることもできます。小さいことですが、継続には重要なことです。
読売KODOMO新聞
対する読売KODOMO新聞は、2011年に創刊した新聞です。他の2紙と比べて歴史が浅く、週刊という点も特徴です。
小学館の協力を得て作成していて、新聞というよりは雑誌に近い印象です。大きな負担なく読む時間をとることができるのがメリットです。
小学生新聞で発行部数No.1をうたっていて、月額550円という価格は、ただでさえ出費の多い受験生を持つ家庭にとっては魅力的ではあります。
この週刊という特徴を活かせるかどうかは、活用方法によるところが大きくなってきます。
1週間分まとまってニュースが掲載されるので、より整理された形の記事になります。
一方で、毎日文章に触れる習慣を身につけるという目的での活用には向いていません。
その点で、私の中では小学生新聞に軍配が上がります。
毎日小学生新聞
1936年の創刊と、もっとも歴史の長い小学生新聞です。
特徴は、少し難易度の高いところ。作りは大人用の新聞と似通っていて、他の2紙が、大人向け新聞と全く違う新ジャンルにある一方、あくまで「小学生用の新聞」という位置づけを貫いています。
ニュースの選定は、大人向け新聞と似通っていて、小学生にとって教育上重要か、中学受験に役立つか、という基準はあまり色濃くありません。
「子ども特派員」による取材記事など読者参加型のコーナーは特徴的ですが、特段強くおすすめする理由は、こと中学受験対策という点においては見当たりません。
「常識」は塾の授業では身につかない
なぜ、小学生新聞が中学受験に有効なのでしょうか?
SAPIXでも早稲田アカデミーでも日能研でも、また四谷大塚でも、時事問題対策は行います。
しかし、各塾でとられているような「スパイラル方式」は、こと時事問題に関しては機会が少なくなっています。
たとえば、時事問題の重要テーマの1つである災害。
2021年の中学入試では、豊島岡女子中学で、2019年から国が導入している、防災情報の5つのレベル分けについての知識を問う問題が出題されました。
ア 大雨などで自治体から警戒レベル3と発表されたら、高齢者などは避難する。
イ 大雨や台風接近時には、革や用水路を直接見に行き様子を確認するほうがよい。
ウ 大きな揺れの地震が発生した際にガスコンロを使用していた時は、いち早くその火を消す。
エ 小学校・中学校では、防災の日に避難場所まで避難する訓練が義務づけられている。
この中で問われている「大雨などで自治体から警戒レベル3と発表されたら、高齢者などは避難する」という警戒レベルの話は、塾では必ずしも習うものではありません。
しかし、小学生新聞で1度でも触れていれば、あやふやな知識だとしても、正解への近道になります。
ちなみに、この警戒レベルの話は、2021年、さらに法改正が行われました。
通常、塾で時事問題を扱うのは秋から冬の時期。志望校の過去問を解いて、入試に向けて完成度を高めていく、とても忙しい時期です。
少しずつでも先行して覚えられるものは、少しでも早く取り組んでいくことが肝要なのです。
小学生新聞は低学年にもおすすめ
小学生新聞の購読は、思いついたが吉日で、購読は早ければ早いほうがよいでしょう。
3紙とも、漢字にはふりがなが振られていて、低学年から高学年まで幅広い読者を想定して作られています。
さきに述べた、受験に関する情報の多さに鑑みても、朝日小学生新聞などを低学年から購読するのは有効です。
新聞は、大量の文章と情報に手っ取り早く触れる絶好の機会です。
特に、紙媒体の大人向け新聞を購読しない家庭が増えている中、子どもが活字に触れるきっかけとしての小学生新聞の重要性は、以前より高まっていると思います。
「社会」という科目に限定せず、あらゆる科目にまたがる読解力と思考力を養うため、ぜひ活用してください。
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