高校受験対策をするにあたって、3科目にしぼって受験勉強をするか、5科目勉強するのか?特に関東圏の難関高校を目指す生徒にとっては大きな悩みの種です。開成は5科目受験だけど、早慶は3科目。理社なんて勉強したくない、というのが本音の受験生も多いはずです。一方、塾は「まずは5科目勉強しましょう」と勧めてきます。一体なぜ?どのように考えればいいのでしょうか。
中学受験と異なる科目選択事情
中学受験の場合、多くの難関校は4科目入試で、難関校を目指す場合、4科目学習するのが通常です。
かの有名な、日能研の「R4偏差値」表を見ても、上位校を見渡す限り、ほとんどの学校が「4科目判定校舎」となっています。
しかし、高校受験の場合、状況は異なります。
国立大附属高校や都道府県立、すなわち公立は5科目入試ですが、私立のほとんどは3科目入試なのです。上位校を見渡すかぎり、5科目入試は、開成や渋谷教育学園幕張など、一部の私立高校を除き、3科目入試です。
中学受験では4科目判定の慶應や早稲田も、高校入試になった途端に3科目受験となります。
なぜ5科目入試?なぜ3科目入試?
5科目入試、3科目入試、それぞれには、大人の事情があります。
公立高校・国立大附属高校
これは簡単。基本科目の5教科で判定するのは、もはや地動説レベルの常識です。
慶應・早稲田
では、早慶はなぜなのでしょうか?そのわけには、受験者数の多さにあります。
慶應義塾高校は一般試験の受験者数が1,000人を超えます。早稲田大学高等学院は約1,500人です。ともに1,000人を超える受験者の答案を、1日程度で採点しなくてはなりません。
記述式問題はその科目の担当教師が、記号式は音楽や美術などを含む他の科目の教師の力を借りて、学校総出で採点するわけです。3科目だけでも採点は大変なのに、さらに2科目追加するというのは、非現実的です。
というより、非現実的だった。という過去形のほうが正確かもしれません。マークシートの導入など、採点を簡略化する方法はいくらでもあるのですが、昭和から続く入試システムを変えてまで、理科社会の能力を問う意味というのはあまりないのが現状です。
中学受験と違い、「英語」という、21世紀の現代、もっとも重要といってもいい科目があり、さらに数学や国語を科せば、基本的には、基礎学力・思考力など、十分判定することができるわけです。
開成・渋谷幕張などの私立進学校
一方、進学校は事情が異なります。
開成は、「旧校」と呼ばれる中学受験組300人と「新校」と呼ばれる高校受験組100人を切磋琢磨させ、東大の合格者数39年連続日本一を達成しています。ただ、開成にとって「新校」から東大に合格させるのは決して容易なことではありません。
「旧校」については、すでに中学から大学受験を見据え、中学3年生の時点で高校範囲まで学習を進め、5年間で高校範囲を一通り学習し終えるのに対して、「新校」は高校入学後に高校範囲の指導をスタートせねばならず、3年間という時間との戦いなのです。
そうしたなかで、物理・科学や日本史など、基礎知識を身に着けない生徒が高校に入ってくると、大学受験の足かせにもなりかねず、理科・社会の基本的知識を有していることが合格者に求められます。
高校入試を終え、ふたたび3年後に大学入試を迎える受験生の立場から捉え直せば、中学から大学受験を見据えた基本的な学習を進めることにも繋がり、将来的にプラスに働きます。
## 塾の主張する「まずは5科目」
以上のような説明、おそらくサピックスなどの説明会でされているはずです(笑)
そして、こう勧めます。
あとからでも3科目に切り替えることはできます。
まずは5科目しっかり勉強して、3年生になった時に、3科目に変更することを検討すれば十分でしょう。
あとから理社の巻き返しは可能ではないのか?
さて、理社の勉強は、中1から塾で学ばなければいけないものなのでしょうか?
塾の立場からすれば、理社を追加で受講させることで、売上のアップに繋がりますから、当然受講を勧めます。
しかし、冷静に考えたとき、大学受験対策で、日本史や物理・化学などを、3年間みっちり塾・予備校で学習する生徒はほとんどいません。
以下の表をご覧ください。
2020年度 開成高校入試結果(2020.2.10実施)
科目 | 国語 | 数学 | 英語 | 理科 | 社会 | 合計 |
合格者平均 | 59.8 | 68.1 | 64.9 | 34.4 | 35.9 | 263.1 |
全体平均 | 52.8 | 56.4 | 53.6 | 30.8 | 32.4 | 226.1 |
合格者平均–全体平均 | 7.0 | 11.7 | 11.3 | 3.6 | 3.5 | 37.0 |
満点 | 100 | 100 | 100 | 50 | 50 | 400 |
2020年入試の開成高校の合格者平均と全体平均を比較した際、5科目全体では、37点の差があります。
科目別に見ると、もっとも差が開くのは数学と英語。理社は50点満点ということもありますが、それほど差が開かないのが実態なのです。
サピックスでも、早稲田アカデミーでも、中学1年生からオプションで理科を学べるようになっていますが、実際は自主学習でも十分合格点は到達可能です。
サピックスの2020年開成高校の「出題リサーチ」を見ても、社会の歴史問題については「教科書に掲載されている標準的な知識」、地理については「さまざまな国の統計から、その国の基本的な特徴が読み取れるかどうかが試されました」などと、基礎力を問う問題が多い旨の分析が記されています。
大学受験で日本史や世界史まですべて予備校に頼りますか?
よく大学受験では山川出版の「詳説日本史」がバイブルのように扱われ、とにかく「詳説日本史」を徹底的に読み込み、習得すれば日本史は怖いものなしと言われます。
これは高校受験でも同じで、「山川」のような有名な教材はないにしろ、学者が執筆し、文科省の検定に通った「教科書をすみからすみまでくまなく読み込み身につける」力こそ、将来の大学受験をパスするために必要な、「自ら学力」の習得につながる重要な能力なのです。
自力で勉強できる環境は進化している
難関校対策を目的としたものではありませんが、いまはスタディサプリなど、オンラインで学習できる環境も整っています。
コロナ禍でオンライン学習が、小中学生にも取り入れられるなか、高いお金を払って進学塾ですべてを学ばなければいけないという環境も変化が生じ始めています。
高校受験に力を入れられる家庭でも、1,2年生の間は部活に力を入れたいという方もいらっしゃることかと思います。
あらゆるツールを使って、それぞれの環境で最適な勉強環境を作る、能動的に学習する姿勢がいま求められています。
個別のご相談などありましたら、サピックス中学部で最上位のZコースを担当していた、私、Motoサピックス講師がお受けします。ツイッターのDMからご相談ください!!
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